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四季の野の花
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<2004年1月>

 あたたかい冬の季節。寒さを感じないままに新しい年を迎えて、キリリとした寒さがやってこないのではないかと思いながら、このまま春を迎えるには腑に落ちない思いをしておりましたが、やはり春はまだ遠く、遅ればせの寒さがやってきました。近郊の山には雪が積もって、少しだけ暖かい日差しを浴びて解け始めていました。まだまだ硬い蕾のままの山の木々は、冬木立の寒々としたたたずまいで色を失い、芽吹きの春を待っている風情でした。

 さして深くない谷の向こうに、鮮やかな赤で藪椿の花が咲いていました。幻影を見たかのような小さな筒咲きの一輪の紅は、圧倒的な美しさで存在していました。浅い春に命の輝きを見た気がして、自然の中の自らの存在を考えました。喧騒の中に暮らす日々に、流されていく時が見えないでいるのではないかという思いがよぎりました。歩いていくことに懸命で、後ろを振り返ることがほとんどないことに気づいてみると、どんな足跡を残してきたのかということが気になりました。

凛とした自然の中で、自分の呼吸する音さえ聞こえそうな静かな空間は、ほんの瞬時でも自分と向き合うことを要求してくるようです。そんな思いで、穏やかな光に包まれた林の道を歩いてみました。ことしは、少し自分と対峙するべきなのかもしれません。

 時々教室の野外授業と銘打って、山の中に花器を持ち込んで自然の草花を生け、山道などに置いてみることをしてきましたが、今年は、その延長線上で4月1日と2日福岡の郊外三瀬峠の山中にあるギャラリー『いっぷく彩』で、茶花と野の花や山の花を生ける花展をします。

 忙しい人が、深呼吸をしに来ていただきたいのですが、残念ながら休日ではありません。そして、またひとつ、5月には博多座の隣のリバレインでの花展も予定しております。たっぷり自然を満喫していただける、広山流の静かな空間を展開したいと思っております。遊びにおいでいただければ幸いです。
秀可 

広山流 福岡支部 [風の教室] http://www.shu-ka.net/