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<2005年11月>

博物館周辺の楓(ふう) の木が真っ赤に色づき、背後に続く銀杏並木の黄色と美しいコントラストをなして、秋が深くなっています。紅葉を見に行くゆとりを欠いていることに気づいてため息をついていたら、生徒さんがお稽古の終了後に連れ出してくれて、周辺の美しい紅葉を見せてくれました。見事な美しさの南京(なんきん)黄櫨(はぜ)が住宅地の並木を構成していて、ぐるりと車で回りながら思わず歓声をあげていました。紅葉する木々のグラデーションの見事さは、造形の神の腕の冴えに他ならず、やがて来る色の薄い季節を前にひと時の光芒を放つかの様に思われました。 

庭の隅に、数年にわたって桜の木やもみじなどの落ち葉や雑草をあつめて積み上げていた場所があるのですが、かねてからミミズなどがいて、きっといい土になっていることを予測しながら掘り起こしてみると、案の定ふかふかの腐葉土になっており、まだ完治しない腰の痛みを気遣って手伝ってくれる生徒さんと、さっそく平らにならして大事に集めていた貴重な山野草を植えました。半日冬の陽があたり、夏は巨木と化したヤマモモの葉陰になるので、無事に育ってくれることを願いながら、鉢植えでしか育たないであろうものを除いて植え込んでいきました。        

いつの間にか消えてしまっていた山野草の多いことに気づいて少なからずショックでしたが、春には芽吹いてくれることを祈りながらの作業でした。茶花のお稽古に不足する花材が、少しだけでも満たされればよいのですが・・・・。

この二・三日時雨が続いて庭のニシキギが色を増し、なんともいえない美しさです。時雨の後にやってきた小春日和の穏やかな光に映えて、縁側で飽きずに眺めています。もう間もなく師走に入ることがうそのようなこの数日間、秋の終わりは、まだ優しい自然の中にあるようです。

秀可

広山流 福岡支部 [風の教室] http://www.shu-ka.net/