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<2006年6月>

柿蘭

心待ちにしていた柿蘭が咲きました。 昨年、初秋の頃、知人に連れられて行った阿蘇のふもとの山野草を栽培しているところで出会いました。 高地のものが都会で育つのか心配でしたが、結構強くそんなに珍しいものではないと知って入手したのでした。冬に枯れて、春に芽を吹いてから育っていくのを楽しみにしておりました。柿の実の色をしたこの蘭は、小さな小指の先ほどの大きさで鈴なりの花を咲かせています。鮮やかなオレンジ色は存在感たっぷりで、高貴な感さえあって優雅です。どうか来年も消えずに楽しませて欲しいと願うばかりです。

このごろ、たびたび郊外に出かける機会があります。田んぼのあちこちに麦の穂が色づいていて、もう刈り取りが終わって野焼きが行われているところもありました。夕暮れ近く、その煙が薄い層をなして山の端にたなびいている美しい光景を目にしました。穏やかに暮れていく田園の、失われつつある日本の原風景に出会った感があって、温かいものが胸にあふれました。

人生にはいろんな出会いがあって、豊かな彩をそえてくれる時々に思いを重ねてゆきます。人も花もめぐりあっては消えていく運命を担ってそこに在ります。つかの間の季節、可能な限りの優しい時間を過ごせるように願いながら暮らしていくことが出来ればと思います。
秀可

広山流 福岡支部 [風の教室] http://www.shu-ka.net/